結婚相談所レポート 婚活体験記38歳女性
【あらすじ】
婚活初デートのランチでうどんを食べていると「僕たち結婚できますか?」と彼が問う。不思議なことに、そんな彼に魅かれていくのはなぜだろうか?
新宿初デートの最中に、ふと亡き父のことを思い出し、私は彼に父の面影をだぶらせているのではないか?と思い始めた。しかし、帰りの電車の中で、私がお嫁に行くと実家で母一人暮らしになる。そんなこと今の今まで思わなかった。
1979年の創業より、埼玉県さいたま市で“成婚にこだわった”サービスを提供し続けている、結婚相談所KMAがレポートする「婚活体験記ブログ」です。
《第8回》
《婚活体験を綴る女性のプロフィール》
【黒田沙里さん(仮名)38歳・高卒・会社員・埼玉・川口市在住・158cm・55kg】
「婚活体験記」なるものを書いてみなさいと担任カウンセラーに言われて、まず「書ける?」と思ったけれど、実名は伏せるという条件だったのと、面白い、と思ったので引き受けました。
婚活初デートでまた言った結婚できますか?
元祖サラダうどんを食べていて、池田智也さんは口にマヨネーズをくっつけて、
「僕たち結婚できますか?」
唐突気味に、また切り出したので、私は黙って彼をにらみつけた。
おかしい奴!と私は口に出さないのに、「おかしい奴でしょ!」だって。
私はなぜか吹き出してしまった。
私の周りにはほとんどいないタイプだし、それが演技だとしてもトリッキーだし、ドラマを見ているような思いになった。
私は彼を断れなかったのはひょっとしたら“婚活ドラマ”の続きを見たかったからかもしれないと思った。彼は私を颯爽としたヒロインに見立てて、お芝居をしているのかもしれなかった。
彼の顎のとんがりにそり残した髭を見て、ほっとしたのはどういうわけだろう。
私たちはうどん店を出て、東口に向かう途中の背の低いトンネルをくぐり西ロに出た。出ると、昔ながらの出店があって、そこではウサギなどを売っていた。30年近い前、何かの用事があって、家族で通りがかったとき父が、
「もうお父さんの学生時代にはあったお店だよ」と言ったのを思い出した。
永永無窮とウサギを売り続けているのだ。私はそれを彼には言わなかったが、すごく感動していた。
彼は私の表情をすぐ読み取って、「どうかしましたか?」と言った。私はかぶりを振った。
私は彼に父の面影とだぶらせていたのか?と思った。父が生存中はその内面は深く理解できなかった。
しかし、私が悩み多い思春期にふさいでいたら、あの実直な父が、なにか彼のような言動をして、気持ちをほぐそうとしてくれたのは覚えている。
私はそれでは笑えなかったし、なんの慰めにはならなかったが、その厚意には感謝している。
小田急の改札口を入るとき、お見合いの日に別れた池袋の改札口で見せたように、彼は満面に笑みを浮かべていた。少しは寂しそうにできないのだろうかと思ったが、それが彼のポリシーなのだろうと思いなおした。
私は彼が望んでくれるなら「お嫁に行こうか」と思った。
「おかしい奴」と思いながらも何か捨てきれない愛嬌が彼にはあるし、一緒の時間がリラックスできている。
彼のほうもひどく緊張しているふうもない。たぶん私でいいのだろうと思われた。
お嫁に行くとどうなる?母一人暮らし心配
しかし帰りの電車の中で、今更ながら、娘がお嫁に行くと一人暮らしの生活になる母は、どうなるのだろうと思った。そんなこと今の今まで思わなかった。
「お母さん、私が結婚したらお母さん一人暮らしになるのよ」
帰ってから母に言ってみた。
「なに言ってるのよ、私はまだまだ元気で介護の必要もないし、私のせいでサリの幸せをこわしたくないわよ」だって。
それは前々から聞いていたから今日まで気づかなかったわけだけれど。
その夜、部屋から蕨(わらび)市に住んでいる二歳違いの姉に電話をした。
「サリちゃん大丈夫、そんなこと心配しないでいいのよ。お母さんもそんなあなたの気持ちはうれしいと思うでしようけど、お母さんって自分が子供の足手まといになるのが一番いやなのよ」
「私が近くにいるしね」と姉は言った。
確かに車で10分あれば家に着く地域に嫁いでいるからいいようなものだけれど。でもご亭主のご両親だって高齢になってきているし、今後様々な壁が立ちはだかってくるはずである。
「サリちゃん、そんなこと考えていたら自分の幸せを逃がしちゃうぞ!」と言ってから、「ところで、あなた相模原の人と結婚したいの?」
「なに言ってるの、そんなことまだ決まってない」と私は言ったが、自分の意識下でそうなっていく予感があった。
これは不思議というほかない。
「そうなんだ?」
「違うってば!」
「わかった、わかったわ、自分の気持ちに正直に従えばいいわ」と姉は言ってくれた。
お見合いの直後「へんな奴」と彼のことを言いながらも、私が好感を持ったらしいと姉なりに直感したらしい。
だから「断るんでしょ」とは言わなかったのだ。家族だからわかるのだ。
電話で池田智也さんは、翌週川ロヘ来たいといったのだけれど、私は渋った。
その代わり「私、八王子に行ってみたい!」と言っていた。
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