結婚情報サービスでお見合いお断りばかりの男性にレクチャー指導
お見合い結婚体験談
平成初期のころ、東大卒の35歳エリート男性が婚活相談に来ました。私たちは入会前の相談に来た方を「相談者」と言います。「カウンセリング」の専門書などでは「来談者」とか「クライアント」などと言っています。結婚相談所に入会すれば「会員」と言っています。
このエリート男性が人と話すとき、相手の目を見ないのです。上目遣いで見て視線を外すのです。きちんと話すのですが、こちらとしては、何か「疑われている」あるいは「見下されている(東大卒だけに=考えすぎ?)」ような気がしてきます。
それが話の内容に、色濃く組み込まれるので、なおさらのこと気分が良くないのです。「結婚情報サービス」の会社で10人の女性を紹介されても、「お見合いお断り」ばかりだったとのこと。そうだろうと思いました。
お見合いでは相手の目を見て話すのが当然のマナー。婚活を始めるには、会う人を不快な気持ちにさせる「目を見て話さない」男性のマナーを直さなければなりません。そんな男性に「人に好かれる方法」と「好印象を与える話し方」をレクチャーをしました。
仲人からの教えを自分なりにアレンジして過去のお見合いの失敗を活かす、エリート男性ならではの結婚するための努力の仕方をブログでご紹介します。
《相談者プロフィール》
【池内悠真(いけうちゆうま=仮名)35歳・大卒・会社員・浦和市(現さいたま市)在住・初婚】
《妻は仲人名人》
昭和から平成の時代にわたり、“仲人おばさん”としての経験を備忘録としてノートに書き留めていました。今は息子の嫁が仲人を継いでいますが、少し時間ができましたので、時代はとびとびになりますが、創業者が当時を思い出すままブログに書きます。
初対面の会話で違和感を覚える相手を見下す男性
きょうは、約30年前(平成初期)のお話になります。忘れようとしても忘れられない強烈な印象があります。
「僕はこれまで女性と交際したことがないのですが、女性は知っています」
ソファーに座るなり、男性は切り出しました。初対面で常識外のことを言う人はいなくもないが、彼は要するに女性の体を知っている、女性経験があると、聞いてもいないのに言いたいのであろう。そう述べることになんの意味があるのか、わからなかったのですが、そう言い終わった時の少し誇らしげな様子から、若者(少年)特有の優越感であると理解できた。
私としてはそれを咎めようとは思わないが、変な価値観を共有しようとした彼の幼さを感じた。それは違和感でしかなかった。第一「交際もしないで女体を知っている」とはそもそも女性を何と心得るか、ということである。
女性にお金を払って男としての欲望を果たしたのである、としか思えない。そのほかのことは考えにくい。それも女性である私の前で言うとは無教養甚だしい。どちらにしても、私の仲人人生では記憶に残る相談者であった。
エリート企業勤務の東大卒男性をカウンセリング
「ところで大卒とありますが、どちらですか?」
私は相談に応じる前に書いてもらったアンケート用紙を見ながら聞いてみた。
「東大なんです、経済学部経済学科です…」
すまなさそうに言う彼をみて、女性だけではなく、社会全体に対しての彼の接し方が分かったような気がした。私には「東大で、ごめんなさい…」と聞こえた。
たしかに同じ大卒でも東京大学は日本における最高の偏差値を誇るし、だからこそ超エリートと言える。そして日本の政治を動かしている政治家や、なんといっても官僚の中での「東大卒」はその中枢を担っている。それはとりもなおさず日本の政治の中心にいるということである。民間会社でも経営の中枢を任されていることが多い。
「で、会社ではどういうお仕事を」
「〇〇〇〇です」
と大手金融企業の社名までいった。今は合併して社名も変わっているが、当時は大卒者がめざす一番人気の会社であった。池内さんはそこに在籍しているのだ。つまり彼は人も羨むエリートコースを歩んでいるのだ。
「高校は?」
と念のため聞いてみた。
「浦高です!」
埼玉県立浦和高等学校である。私がいるこの北浦和駅が最寄りの、難関大学に多くの合格者を輩出している超エリート高校である。
結婚するには出会いが必要お見合いは条件で選ぶ
彼をうちに入会させれば、あっちからもこっちからもというわけにはいかないが、そこそこの出会いはあることは分かっている。東大を除く六大学や上智大、青山ほどではなないが、そこそこにお見合いはできる。エリート大学を卒業した女性はその逆で少し難しくなる。
お見合いは「条件」の出会いであるからである。そこそこ、というのは東大卒の男性を選ぶ女性がそれほど多くないのである。
問題は交際したことがないという彼の言葉が問題であった。私が切り出す前に彼から発言があった。
「僕、お見合いができますか?」
私は「う~ん…」と唸った。
「お見合いはできますよ、できても問題はそのあと、交際がうまくいくかどうかですよ」
と言って、
「あなたは背も高いし、最高の大学を出ておられるし、申しぶんないですよ」
「でも、それがダメなんですよ」
「え!どうして?」
「前入会していた東京の結婚相談所でさんざんお見合いしたんですが、ことごとく失敗に終わったんです」
「入会しておられた?、どういうところへ?」
「新宿のアルトマンです…」
結婚情報サービスの先駆けアルトマン・システム
アルトマン社は、東西ドイツが合併する以前の西ドイツの会社で、昭和の終わりに日本の結婚相談所業界に打って出てきたのだ。新宿新都心の超高層ビルに入居して、私たちの入会金の5倍強の高さで広告宣伝しはじめた。私たち業界は驚いた。日本の昔からある古き良き仲人の風習も滅亡するかと思われた。なにしろ広告宣伝の説得力の高さに唸った。
まず、「人間には一人一人顔が違うように、それぞれの特性がある。西ドイツのアルトマン博士がその特性を700項目に分析し、その最大公約数で相性というものを割り出した。それによって導き出されたカップルは、百年前から(註:前世からとは言わなかった)運命づけられたように結ばれるのである」
これはキャッチコピーの前フリであるから「アルトマンに入会すれば結婚できる」とは言っていないが、そう言っているかのように聞こえる。そのセンセーショナルな内容は、出会いを求めている男女の心もとない心理を完全にノックアウトした。
中央紙の三大新聞の一面に広告宣伝したのだから私たちには太刀打ちすらできない。なにしろ私たちの広告宣伝と言えばチラシを印刷して、配る程度のミニコミでしかなかったのである。
目の前にいる池内悠真さんも、その惹起にやられたクチであったのだ。
私たち仲人の間では「あんなことで結婚できるなら誰でも結婚している」とは思っても、事実、新宿へ新宿へと独身の男女が列をなしたのである。当時、婚活という言葉はなかったが、今でいうと一種の婚活ブームであった。
しかし、ブームは一年ほどで去った。低迷したかのような私たち街の仲人の世界には元のように会員さんは戻ってきた。
ある意味では、そうした広告宣伝によって、家に閉じこもって男女の交流を積極的にしていなかった人々をオモテに引っ張り出してくれたアルトマン社の功績は大であった。それを機に私たちの結婚相談所業界には活気があふれてきたのである。
お見合い失敗続き自信喪失アルトマン社での活動
「で、お見合いは沢山できたのですか?」
私は聞いた。
「半年で10人ほどできました。早稲田・慶応の人ほどではありませんが、相当できました」
「そうね、相当ね。それで出会うお相手は、分析されて前世からの因縁で、いいえ運命で結ばれていたと思いましたか?」
「いやあ、あれば宣伝がうまいですね。電通など大手の広告会社のものでしょうね」
「で、運命的な…」
私は聞いてみたのである。
「いいえ、いいえ、運命など何も感じませんでしたよ」
やはり、と私は思った。そうして、
「人間って、昨日まで憎い、嫌いだと思っていた異性を大好きな人になっていくこともありますし、その逆もありますものねえ」
「………」
彼は黙っていた。
「けっきょく真心(まごころ)が感性に訴えて人を好きになる、のでしょうね」
と私は持論を唱えた。そのとき気が付いたのだが、彼はものを言う時こちらを見るが、素早くと言っていいくらい視線を外す。そして、
「そうですか…」
と言ってまたこちらをちらっと見るが、すぐ視線を外す。彼には、私のいうことにすぐには理解できない。
「でも、それにしてもあなたは半年で10人もの女性とお見合いしたのですから、その中には感性に訴える人はおられなかったのですか?」
と聞いてみた。
「感性も何も、こちらがよければ、あちらがダメの繰り返しでして、うまくいきませんでした。要するに女性は打算的で、将来よりも現在を享受したいという人ばかりでしたね。もう一回会えばわかりましたよ」
「これは、池内さんがうちへ入会なさったら、じっくり考えてみたいのですが、で、けっきょく交際を申し込んだ女性はおられなかったのですか?」
「いいえ、5人くらいいましたよ、妥協の産物ですが…」
「えっ!」
と私は少し驚いてみせた。
「それでも交際には入られなかったのですか…」
「まあ、あちらからは断ってきましたから」
結婚したいならするべきこと相手の目を見て話す
なんだ、やっぱり断わられたんだと思った。入会させるならその原因をさぐらなければならない。
ひとつには、彼の人を見るときの目つきが「疑い」の眼に見える。しかし、思うに彼の超エリート意識がそうさせているのかもしれない。いわば人を見下すという意識が根底にあって、それが顔に出ているのかもしれない。
私の知っている東大を卒業したかたはもっとおおらかで、逆に気持ちをそらさない人なのだが…。
池内さんは、今は自信喪失しているに違いないと私は思った。この状態で彼をお見合いに行かせたら、ますます嫌気がさすに違いない。私は試しに聞いてみた。
「うちへ入会なさりたいですか?」
“まだうちのシステムも何も説明もしていないのに…”と思っていて、結論を急いだ感がいなめなかった。が、
「入会させてください」
と彼は言下に言った。
私は、「それでしたら」と言って、
「言われるのはおいやかも知れませんが、人とお話しするときは、視線を外さないでちゃんと相手の顔を正視してください」
彼は「えっ」とこちらを見続ける。このおばさん、なにを言うかという顔をした。おばさんと言っても、私はその当時40歳くらいであった。
「私だけではないと思いますが、あなたとお話ししていると、なにかこちらを疑わしく思っておられるのか、それとも見下しておられるのか、どちらかにしか感じられないのですが…」
「そんなことを思われるのですか…」
と彼は意外そうな顔をした。
「そうね、それは私の感想ですよ、あくまで。どんな大学の女性とお会いしました?」
「ええっと、上智とか、明治とか、早稲田もいましたか」
「ふむふむ…」
「どちらにしましても、視線を外さないで話すお相手の顔を正視なさらないと、それこそ何を考えているかわからない人ってことになるわ」
「そうなんだ、そんなこと言われたことない…」
しかしそれでも彼は、思い当たることがあるというふうに頷いた。
「そうかもしれません、きっとそうかもしれない…」
語尾をつぶやくように言った。
彼は、その日のうちに入会手続きを済ませて帰った。
結婚するために必要な条件仲人との信頼関係構築
翌週の土曜日、
「おはようございます!」
玄関を入るなり明るい。打って変わって明るくて人が変わったようであった。私もつい頬がゆるんだ。
「僕は先日、ここのことを母に話したんです。最初は“ええ!結婚相談所?”って驚いていました。前のアルトマン社のことは言ってなかったものですが、うすうすわかっていたようでしたが、今回は地元の仲人さんのところでびっくりしたようです」
池内さんは雄弁であった。
「母にこちらの対応を話したところ“他人にそこまで言ってくれるところはないよ、たしかに悠真ちゃんはそういう誤解されそうなところがあるだけに、そこに入会してよかったよ”と言ってくれましたよ。“歳いってるおばさんに世話してもらうのがいいのよ”っていうから、俺の歳とあんまり変わらない女性だと言ったら“若いのにできた人だね”って」
「あなたはお母様から悠真ちゃんて呼ばれているのね」
「あっやっぱり、そういうのおかしいですか?」
「初対面の人には違和感がありますね、少し親しくなればいいけれど…」
と私は言って、
「もうこれ、お見合いと交際についてのことをお話しているので、できれば私のアドバイスは素直に聞いていただくと、うまくいくと思います」
続ける。
「あなたの場合、うちでもそこそこのお見合い話があります。で、“その基本1”ですが、お見合いをしましたら、こちらが断るのはいいのですが、絶対に断られないようにしてください」
私は持論を展開する。
「絶対に!ですか?」
彼も真剣である。
「絶対に、です。絶対に何があっても好感度をアップして断られないようにしてください。案外難しいですよ」
「断っても断られない、ですか…」
「そう、私のいうとおりにすれば、二人目くらいで結婚を決めてしまいます」
彼は目を丸くして私を見た。
「そんなに早く結婚を決められますか?」
「決められます、ただお一人目は慣れていませんから、私のいうとおりできません。ですから二人目で結婚できます」
「うまくすれば一人目で結婚を決められるんですね」
「決められます、気に入られさえすれば即決められます、なぜってまず“お見合い身上書”を見て、ご本人の様子、彼女の家族構成から全部わかってお会いするのですから、あとは二人の相性、フィーリングが合うかどうかですから…」
「そのとおりですね」
という彼は私を真正面から見てしゃべっている。
「池内さん、もう正視してお話ししているわ、あなたやればできるじゃないですか。さすが東大経済学部!」
と私は彼を持ち上げた。彼は心から嬉しそうにした。私との信頼関係ができたということか。
お見合い心構えのレクチャーは人に好かれる方法
その後、2時間ほどかけて、人に好かれるための態度、好印象を与える話し方など、基本的なお見合いの心構えをレクチャーした。
気持ちを大らかにゆったりして、お見合い相手の気をそらさず、インテリジェンスを感じさせる対応、そして何より相手への関心を持ち続けて、飽きさせない。最後に言った。
「要するに、しつこすぎると困るけれど、“僕はあなたにすごく関心があります”ってお見合い相手の心に訴えるの」
彼は、
「ぷふぁ~」
とばかりに大きなため息をついた。
「そうして、一生関心を持ち続けられそうな女性と、あなたは結婚しますから大丈夫よ」
と私がいうと、彼は私を見つめて何度も何度も頷いてみせた。
「先生、頑張ってみます!」
と言った。
「あら私、先生になっちゃった」
と私はおどけた。
レクチャー効果か?初めてのお見合い好きになる
池内悠真さんのプロフィール経歴(もちろん氏名、勤務先は伏せてある)を公開して、その週から3名ほどの女性からお申し込みが入ったので、彼を呼び(当時はネット化していないので)選ばせた。
その一人を選び、次の日曜日お見合いに行った。当時は申し込んでも申し込まれても、女性側の結婚相談所の示した日時に、男性が出向くシステムであった。結論を先に言うと、彼は、法政大学卒の女性を初めてのお見合いで好きになり結婚した。
後日談を聞いたが、彼は私から受けたレクチャーを、その日のうちに全部ノートにまとめ、なおかつそれをふくらませ(つまり過去のお見合いで出会った女性との失敗を活かして)、応用編をつくり、何度も頭の中で反芻し、シミュレーションを繰り返して勉強した。彼に言わせると、私のところへ来た、最初の日に私が言った言葉を“キーワード”にしたと言った。それは、
「真心(まごころ) が感性に訴えて人を好きになる」
このフレーズがずっと頭から離れなかったのだという。
池内悠真さんは、その年の秋口に華燭の典を挙げたのだが、そこへ私を出席させたくて何度も来社した。私が固辞するものだから、彼は母親まで引っ張り出して誘ってくれた。
しかし私は披露宴には出られない。特に土日は、まだ結婚していない私の会員さんが相談に来て応接室をうろうろしているので、出ていられないのだ。(この項了)
まとめ 人生、万歳!なのですか
いつもつくづく思うのは、仲人はいつになっても、会員さんが自分を成長させてくれるということである。そして、会員さんはお相手の異性との運命の出会いを求めて、結婚相談所に入会するのだけれど、私たち仲人は会員さんとの出会いで、人生を豊かに送れるということである。
池内悠真さんも、他ではうまく運命の赤い糸が結べなかったけれど、私と出会うことで、素晴らしいパートナーに恵まれたのだ。まさに人と人との出会いの偶然ではあるけれど、矛盾してもその必然性を考えざるを得ない。人生、万歳!なのですか。
(この項了)
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