結婚相談所で結婚後、妻から離婚された再婚男性のご縁を結ぶ

榎本大輔(仮名)結婚相談所 成婚体験談

 

《相談者 プロフィール》

【群馬大学理工学部卒・35歳・会社員・再婚・168cm・70kg・さいたま市在住・父65歳・大卒・元会社員・母62歳・高卒・妹32歳・大卒・既婚・弟31歳・大卒・未婚・会社員】

 

今は息子の嫁にあとを継がせていますが、少し時間ができましたので、備忘録としてのノートを取り出して、私の仲人おばさんとして、人生の集大成のつもりで書きます。時代はとびとびですが、思い出すままブログに書きます。

 

41年前、この世界にのめり込んだきっかけは、25歳の時(すでに結婚していました)私の大学時代の同級生と職場の同僚の男性を結び付けたことが始まりでした。

 

目次
 

 

《妻の結婚の目的は種馬だったみたい…》

 

時代が前後しますが、仲人業を始めて12年くらいたった頃のお話しです。

 

予約していた元会員の榎本大輔さんが来た。ドアを後ろ手にしめるなり、彼は頭をかき、「先生、妻に愛想をつかされました」と言った。

 

彼は1年ほど前に結婚したはずであった。うまくいっていたのは最初のひと月くらいで、奥さんは妊娠が分かると、すぐ実家に帰り戻ろうとしない。

 

そうこうしているうちに産み月がきて、産院へいき、男の子を生んだ。榎本さんは、産院で子供を一回だけ抱かせてもらったが、依然として奥さんは実家から戻らない。

 

「僕はなんだか種馬にされたみたい。大した血統でもないのに‥」

 

苦笑いしながら言った。

 

「で、どうしたの?まさか離婚ではないでしょうね」

 

「いやあ、そのまさかですよ」

 

顔を赤くしている。

 

離婚届けに署名して印鑑を押す

 

「一週間前、離婚届を送ってきて、いろいろ書いてあったので、僕も署名して判を押して出してしまいました」

 

「うんまあ…」

 

と私。確か田舎が福岡県で、ご両親とも離れていてあんまりじっくり相談できなかった模様。

 

「もっとなんとかならなかったの」

 

「最初から、あちらがなんだか結婚をすごく急いでいて、あれよあれよっていう間に式を挙げちゃった嫌いはありましたね」

 

彼の実家は福岡であるが、親戚が群馬県にあり、群馬大学の受験をきっかけにこちらに永住することにしていた。会社も一流企業だし、給料もいいはずであった。さいたま市から丸の内の本社に通っていた。

 

《離婚の際に子供の親権は外されました》

 

「したがいまして、晴れてこちらの会員としては有資格者だと思いますので、またまた面倒を見てください」

 

と頭を下げた。私が年齢は2歳しか上でなかったが、なにか母親にでもなったように、

 

「相談にくらい来てくれてもよかったのに…もう」

 

と榎本さんがいじらしくなった。

 

「まったくもって…」

 

などと年よりじみたように言った。

 

「で、子供の親権はどうしたの?」

 

「親権者としては外されました。よかったのか、どうなのか」

 

「子供は可愛かったでしょう」

 

榎本さんはその時は黙って下を向いて、何かに耐えるようにからだを固くした。

 

「まあふり返っても仕方がない。ハンコも押してしまったんだから、やり直そう!今度はもっといい結婚をしましょう、ね!」

 

と励ます以外ない。12年も仲人をやってきて、彼が離婚第1号であった。

 

《お見合い結婚での離婚はありません》

 

まもなくして、予約なしでとつぜん女性の訪問者だ。私は榎本さんに女性の身上書が入ったファイルを渡し、その中から良さそうなのを選ぶように言って女性と対面した。

 

その母親は、娘の結婚について相談、というより結婚相談所は大丈夫?ということで、いわば娘を入会させていいところかどうかを偵察に来たのである。

 

当時は今ほど開かれた結婚相談所のイメージではなかった。さしずめ「結婚相談所でなんか…」「結婚相談所でしか…」というところ。

 

今は経済産業省管掌の「指定業者」になり、入会前の「概要書面」や「入会申し込み契約書」などが義務づけられている。その中身は「特別商取引法」や「個人情報保護法」などの内容のほか、入会後のサービスの明確化など、なかなか厳しく規制されている。それまでは相談所の経営者の良識によるものであった。

 

しかし、こういう規制のおかげで昔からはびこっていた悪徳業者がいなくなった。

 

ですから当時の入会者は、結婚相談所の仲人さんの良識に頼ることしかなかったのである。目の前にいる母親もその辺を見極めているようであった。

 

娘さんの学歴が大卒ということは、最初からその母親が言っていたので分かった。例によって仲人の遠慮のなさで、ずけずけ訊いた。

 

身長は159cm、体重は48kgとまでも分かった。そこで念のため、

 

「初婚ですね?」

 

と聞いてみた。

 

「ん、まあ‥」

 

と母親は言ってから「ところで」と、

 

「ここで結婚した人は、けっこう離婚ってありますか?」

 

と聞いてきた。私は即座に、

 

「お見合い結婚での離婚はありません」

 

といつも言いなれていることを言ったつもりだが、長テーブルで異性を選んでいる榎本さんを見た。彼は見ているものから目を離さないが、頬をゆるめたようであった。その母親は、少し大げさに驚いて見せて、

 

「そうなんですか?」

 

と言った。

 

「ええ、聞いたことありませんね」

 

“とうとう第1号がきょう出来ましたが…”とは言わなかった。

 

《お見合いから恋愛に発展するのですね》

 

「なぜでしょうか?世間では2組、3組に1組くらいあると聞いていますが」

 

「思うに…」と私。

 

「お見合いの場合、ご自分だけじゃなく、ご家族に備わっている条件をすっかり知ってからお会いするからじゃないでしょうか。それがスタートで、そして好きになっていくというパターンを踏んでいきますから…」

 

「お見合いから恋愛に発展するのですね、なるほど」

 

母親は得心している。実際、自分や家族の学歴ひとつでもこだわる人はいるし、身長、体重などを厳密に考えている会員さんもいる。

 

ただ入会するときはすごくこだわっていた人が真逆の異性と結婚する、と言ったことはよくある。

 

例えば男性で「僕は太っている女性は絶対に好きになれないと思います」と言っていたのが、成婚のご挨拶に連れてきた女性を見ると、彼より体重がありそうだということはよくある。そして二人ともニコニコしているのである。

 

お見合いから恋愛に発展するカップル

 

《夫のウソが悔しくて三行半を突きつける》

 

話しているうち、「初めての結婚の場合はそれでいいのでしょうけれど、実はうちの娘、離婚したいっていうんです…」

 

と母親はとうとう切り出した。何かあると思っていたが、

 

「ああ、でもまだ決まったわけではないのですね?」

 

と私。

 

「いえ、別居して半年になるんです」

 

「何歳におなりですか?お子さんは?」

 

と聞いてみた。

 

「まだできなかったんです。なんですか、恋愛中はウハウハといいことずくめでした。ところが、大学卒業って言っていたのに中退だったり、年収も500万円と言ってたのに350万円だったりで。いいえ娘はそんなことは最初っから言っていてくれればよかったって言うんです。ウソをつかれたのが悔しいっていうんです」

 

「じゃ結婚してまだ浅いのですか?」

 

「もうそれが分かってからどうもモヤモヤし始めて、うちに帰ってきて毎日ため息ついています」

 

母親は私の質問に答えようとしないでしゃべった。

 

「結婚して間がない?」

 

「あっそうそう式を挙げてから半年です。娘は、式を挙げるころには何か勘づいたらしいのですが、もう招待客に連絡がいっていますし、また婿さんを嫌いではなかったので披露宴をしてしまったんです」

 

「よくあるケースですね、まるで“成田離婚”見たいですね、あら失礼!」

 

「いいえいいんです、それに近かったみたいですから…」

 

離婚の危機にある新婚夫婦

 

当時“成田離婚”という言葉が流行語になっていた。海外への新婚旅行へ行って、二人が何かでトラブって、帰った成田空港でサヨナラという意味である。現在でいう「スピード離婚」。

 

3カ月は我慢したみたいですけれど…」

 

「ではお家へ帰られてから3月経つのですね。入籍はなさっているのですね」

 

「それはもう、新婚旅行へ行っている間に、お姑さんが手早くしたみたいで…」

 

そういうことも当時はよく聞いた話である。

 

「お母様、それでは修復はむずかしそうですか?」

 

「駄目ですね、娘は私に似て真面目で頑固ですから、こうと思ったらもう引かないですから。今でも婿が迎えに来るんですよ」

 

「そうなんですか?それでお家ででもお会いになるんですか?」

 

「いいえ、部屋から出てこないんです、婿が来ても。私も追い返すのもなんですから上がってもらうんですが…」

 

「お母様とお話しして帰るんですか?彼は」

 

「いいえ主人もお酒が好きですから相手してるのか、されてるのか、飲んで帰りますよ、よろしくなんて言って」

 

人の好い両親である。

 

「お嬢さんもそれじゃおいやでしょうね?」

 

「いつもあとで怒られます。でもね、もし元のさやに戻りでもしたらと思うと、むげに追い返せませんからね」

 

なるほどそういうこともあるか、と思わざるを得ない。

 

《いい人がいれば離婚してもいいかと思う》

 

「お嬢さんはおいくつでした?」

 

と、私はつい仲人としての顔になって、結婚相手はいるかどうかを探る気になっている。

 

29です」

 

「ああまだお若いですね」

 

母親は「ふう!」とため息をついた。そして、

 

「いえね、変な話ですが、娘が本当に離婚したいなら、そのきっかけになればと思いまして、こちらでどなたかおられたら、と思いましてね」

 

私は驚いた。娘可愛さでこうもなるのか、と思った。

 

「いいえ、今のままでは入会できません。せめて除籍にならなければ駄目ですね」

 

「それはそうですね、お相手に失礼ですよね」

 

「失礼というより、私どもへは入会できないのです。はっきりと独身と分かる戸籍謄本がありませんと」

 

今は“独身証明書”を役所で発行しているから、それで代行もできる。母親は顔を真っ赤にして、深々と頭を下げた。

 

「たいへん無礼なことを申し上げました、出直します。そして娘が離婚の暁にはぜひこちらへ入らせていただきたく思います」

 

と言ってから、バッグから写真を取り出した。

 

「娘は不器用で、恋愛もあんまりしたこともなくて、ですからこういうところでないとお相手を探せないんです。ご覧ください、こういう顔しているんです」

 

と言って娘の写真をこちらに見せた。

 

娘のスナップ写真

 

「可愛いじやないですか!これって、いつの写真ですか」

 

と思わずロ走った。実家のベランダの網戸の前あたりで撮ったようで、爽やかな笑顔であった。

 

「つい最近ですよ」

 

と母親は言ったが、そういえば少し愁いを帯びているような風情である。それだけに男性には受けるだろうと思った。

 

「身長は何センチありますか?」

 

158cmくらいです」

 

「榎本さん、あなた何センチ?」

 

急に振られて彼は思わず立ち上がり直立不動の姿勢をとった。話をそれとなく聞いていたはずである。

 

「ビックリしました?そんなに驚かす気はなかったんですが」

 

「はい、たぶん170cmはないと思います」

 

彼に娘さんの写真を見せた。顔がみるみる赤くなった。

 

「彼は群馬大学理工学部卒で、今大手企業に勤めております。お勧めの好男子です」

 

「はあ、素晴らしい方がおられるのですね。娘にとっては、いい出会いになると思います。でも、娘は出戻りになる予定ですので、望むべくもありませんね」

 

「いいえ、お似合いです。彼も離婚したばかりでここに来られたのですよ」

 

母親は目を丸くしてロを開け、それに手を添えた。

 

「お母様、こちらは離婚を歓迎するわけには行けませんが、修復不可能で、不幸な結婚なら別れるしかありませんね」

 

「そうですよね。娘の憂慰そうな顔を毎日見ているわけですから、こっちはやりきれませんよ。でも、こんな素晴らしい男性が現れるなら、もうむしろ早く別れさせます」

 

私と榎本さんは顔を見合わせて笑った。

 

「離婚しても半年は入籍できませんから、ご承知おきください」

 

と添えた。今はそういうシバリもなく、妊娠していなければ、入籍できる。

 

「でも、かつては離婚したばかりで入会してきて、2カ月ばかりで結婚して、入籍はその4カ月後にしたという方もいらっしゃいましたよ」

 

私の言葉に、母親はますます励まされたように、体じゅうに覇気がみなぎった。

 

榎本大輔さんとその娘は、8カ月後、本当に結婚したのである。

 

(この巻完了)

 

 

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